2015年 03月 16日
< 奈良・高山、茶筅の里の伝統工芸 >
中でも茶道において抹茶を点てる際の茶道具、「高山茶筅(ちゃせん)」は全国シェアの90%以上を占め、国の伝統的工芸品にも指定されています。
その茶筅つくりを拝見させていただきました。
500年の歴史と技術。その製法は近年まで秘伝とされ、一子相伝で伝えられてきました。
職人シリーズです。
室町時代、かつてこの地にあった高山城主の次男、宗砌(そうせつ)が親友であった村田珠光からの依頼により作ったのが始まったとされる高山茶筅。
村田珠光とは「わび茶」の創設者とされる方です。
その後時の帝、後土御門天皇のお墨付きをもらってからはこの技法を守ろうと一子相伝としました。
その製作も昼間には行わず、夜、夜中にのみ行われるという徹底ぶりでした。
そんな高山茶筅も昭和になり、人不足となってきたこともあり大阪万博を機に一般公開されることとなりました。
茶筅つくりは、まず職人の手により一本の竹(白竹)を薄皮を削り、十六分割に割ることから始まります。
こちらが職人の方が使われている道具。使い込まれ、手入れの行き届いた「職人の道具」です。
高山茶筅の製作工程のすべては、こうした小刀のみで行われます。
そして「小割」という作業で60~120本の穂に分けられて行きます。
その後「味削り」と進み、そして面取り、下編み・上編みと経て最終的に穂先を曲げ整え、出来上がります。
特に穂先を薄く削る「味削り」という作業では、これひとつで茶の味が変わってしまうと言われるほど難しい作業なんだそうです。
安土・桃山時代に千利休によって茶道が大成されてからは、 表千家、裏千家、武者小路千家の、いわゆる三千家の流派が生まれました。
それらから派生する数多くの流派、そして用途によって種類も複雑となり今では百種類以上にもなるそうです。
そんな高山茶筅で点てたお抹茶をいただきました。
奈良の山の中、美しい庭園を眺める茶室で、伝統の高山茶筅でいただくお抹茶。
なんとも贅沢なお抹茶席でした。
とっても繊細で、しなやかな流線が連なる高山茶筅。
本当に美しいものでした。
500年の長きにわたり守られてきた技法を公開したことで、外国からの安い製品も入ってきるようになったとか。
それもまた時代。
そのなかで伝統が息づく「本物」をこれからも守り、継承していけるよう祈るのみです。
この先、どこかでまた頂くお抹茶が、高山茶筅で点てられたものでありますように・・・。
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by revoir-dima
| 2015-03-16 00:16